月刊 Bedroom techno 9-10月号

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vaporwave is chillout/ヴェイパーウェーブはチルアウト
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bedroomへの一枚
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ep4…Sept falling
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 731records is looking for someone can translate this article into English.
because spreading to a lot of people ”bedroom techno".
e-mail command.731@gmail.com


vaporwave is chillout
ヴェイパーウェーブはチルアウト

Dream Catalogue(http://dreamfm.biz)というvaporwave labelがIndiegogo.comというクラウドファンディングサイトを通して「Hong Kong Express」と「t e l e p a t h テレパシー能力者」という二人の、「2814」というユニットの「新しい一日」というEPが二枚組のVinyl LPになるという企画があった。

BANDCAMP
https://dreamcatalogue.bandcamp.com/album/–18

INDIEGOGO(finish)
https://www.indiegogo.com/projects/2814-on-2xlp-12-inch-vinyl–2#/story

その企画は一ヶ月の期間で214人もの出資者を得て、6,432ポンド、つまり約120万円もの支援を得て無事に成功を収めた。

vaporwaveというジャンルそのものを、あまり詳しく知らない人のために、この2814というユニットのメンバーである「Hong Kong Express」と「t e l e p a t h テレパシー能力者」がどういう存在なのか説明するところから始めていこう。


Hong Kong Express
https://soundcloud.com/hkedream

彼はロンドン在住。vaporwaveレーベルの中でも最重要な存在である「DreamCatalogue」のオーナーだ。
soundcloudで過去の作品を聴いてもらうと、かなりpureなvaporwaveを作る。pureじゃないvaporwaveってなんだよ。というツッコミもあるかとおもうが、そこは後々に語っていくので悪しからず。
英語のリスニングができる方はOSCOBがインタビュアーで配信している「OSCAST」というpodcastのなかで彼へのインタビューをした回があるので聴いてみてはどうだろう。


t e l e p a t h テレパシー能力者
https://soundcloud.com/t-e-l-e-p-a-t-h

vaporwaveというジャンルを聴いていく中で、彼ほど以上にvaporwaveを愛し、精力的に作品を作り、リリースを続けている人物はいないだろう。

彼のbandcampを見ると2013年の10月が最古のリリースとなっているので恐らくそのころから、自身のbandcampや他のvaporwave labelからリリースを続けている。


時はさかのぼり2013年10月

vaporwaveというジャンルの音楽があるらしい。どうやらそれは最近、流行っているchillwaveとは如何やら毛色が違うらしい。
と、twitter上で騒がれ、日本にいる私の元にやって来た。
ちょうど私が曲を作り始めて日本のネットレーベルのコンピレーションに参加し始めたり、731recordsを何もわからないまま始めだした頃だったので、流行りには非常に敏感だった。

しかし、それは少しの間ではあったが流行したものの、今では忘れ去られてみんなはジューク、フットワーク。ゴルジェ、ポエムコアなどの新しいジャンルに目を向けている。

vaporwaveなんて結局はambient musicであり、騒がれていたのは「新しいように見えていた」から。

2015年の10月に戻る。

「2814 – 新しい一日」のクラウドファンディング企画のゴール金額が75万円だったのが、120万円もの金額を投資してくれる多くの人々がいるというリアルがある。
vaporwaveを愛し、制作を続ける人々は私が知っているだけでもロンドン、ロシア、日本、アメリカ……数多く世界中にいて、vaporwaveのレコードを求めるほどコアなファンが居るのだ。

これほど素晴らしいことはない。

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そもそも、vaperwaveは2010年頃に生まれたと言われており、
80年台の日本のアニメやドラマ、ギリシャ彫刻が独特のシティ感と退廃を感じさせるアートワーク、google翻訳に通したような支離滅裂な曲のタイトル、さらにプライベートを一切感じさせず、本当にインターネットに住んでいるのかと思わせるアーティストの秘匿性。

これらのことから上がるキーワードとして「インターネット」「lo-fi」というのがあげられるだろう。

さらに、そして今回の話で重要なのが「free download

vaporwaveは私も愛用する無料録音ソフト「audacity」で80年代のシティーPOPSをbpm80にスクリューさせてやれば誰にでも、しかも高いDTMソフトや有償のプラグインを買うこともなく、「無料」で「簡単」に生産することができる。誰でもvaporwave artistだ。

そんなことから、反商業音楽、反資本主義的な精神を象徴とし、「free download」というのが暗黙のルールであるジャンルだったのだ。

しかしながら、Dream Catalogueからリリースされる音源はほとんとが有料だ。
安心させるために言うと16曲入りで4ポンドなので安い。

これはvaporwaveというジャンルからの脱却でもあり、vaporwaveというカルチャーを2814年の未来にまで引き続けていくための線引きなのだと私は考える。

最初は情熱だけで音楽のジャンルは生まれる。しかし、経営をする者が現れなければお金も回らず、生み出すことができなくなる。つまりカルチャーが途絶えるのだ。
hiphopはmusicでmake moneyという文化があるが、そうしないとアンダーグラウンドな音楽のシーンなど終わる運命だったからだ。

さらに、vaporwaveを盛り上げている一つの要素としては
「SPF420」というオンライン・イベントがある。

HTTP://WWW.TINYCHAT.COM/SPF420

Transmuteo Live @ SPF420FEST2.0 from Transmuteo on Vimeo.

これはtinychat.comというビデオチャットのサイトで行われるDJイベントなのだが、stressという女性(?)が主催の一人であり司会もしている。ちなみに420はマリファナの隠語だ。

このオンライン・イベントは日本からもMaltineRecordsからDJが出演したり他のジャンルからDJを呼ぶ等により、vaperwave愛好家だけでなく多くのnerdから支持されている。

ほかにもOneohtrix Point Neverのwarp recordsからのリリースやVHShardの登場なども挙げられるが、それらを紹介するのはまたの機会にしておくとして、最後にinternetのchilloutであるvaporwaveの永遠の愛をもって終わりにする。


bedroomへの一枚

Damon Eliza Palermo – Clouds of David

Music by Damon Eliza Palermo
From the album “Clouds of David”
https://1080pcollection.bandcamp.com/album/clouds-of-david

1080p
http://1080pcollection.net/

カナダはVancouver。Richard MacFarlaneが運営するカセットレーベルが「1080p」の正体だ。

先に言っておくと日本人のリリースもある。

Keita Sano
“Holding New Cards”
http://1080pcollection.net/keitasano.html

このように各国から様々なメロディアスでちょっと優しいエレクトロニカ、ハウスをリリースしているのが1080pなのだ。

レーベル名は映像の解像度を示す1080pという言葉から来ており、今でこそ当たり前となっているが1920×1080の動画サイズの映像形式を指す。

そんな由来を重ねてリリースされた曲を聴いていくと、どこかに可愛らしさ、時には物悲しさ。そして、LO-FIなんだけれどもHIクオリティという、まるで高解像度なディスプレイでVHSで録画した昔の映像を眺めているような矛盾によって現実からのトリップを与えてくれる。

さて、表題にある作品「Damon Eliza Palermo – Clouds of David」はそんな1080pから2015年11月にリリースされる作品なのだが、視聴してもらうとわかるようにnew ageに近いambientな楽曲だ。

この作品は9曲入りだが、視聴は現段階で一曲のみ。素直に素晴らしい自信だと思う。決して批判しているわけではない。この「River Drum」を聴いただけでambientの名曲だと理解できるだろう。それで充分だろ?と問いかけているような気がして、私は思わずニヤリと口角が上がってしまうのだ。

Damon Eliza Palermoというのは本名で、ヤマハのSU700というドデカイサンプラーミキサーを使い、実際のギターやピアノは使わずに曲を作っている、とのこと。

現段階ではプレオーダーなので、あまり楽曲の感想、評価はするべきではないのかもしれないが、私はたった一曲で素晴らしいと感じたので書かせてもらうことにする。

彼の故郷はミシガン州にあり日本でいう北海道と同じ緯度に位置する。冬はマイナス9度にもなる土地だ。雪も降りスキーを楽しむ人々もいる。私自身、北海道出身なので何となく想像がつく。
冷たい川の水が流れるようなnoisyなサウンドがバックで流れ、透明な氷柱から垂れる滴のようなメロディ。滴が地面に落ち、はじけるようなタムタムが左右に反射する。
そんなミシガン州の冬を感じさせる一曲だ。

冬の冷たい鍾乳洞。洞窟でジッと春を待つゆったりと大きな存在を想像させる。

非常に11月が楽しみだ。




ep4…Sept falling

目の前にいた国民が、役人である蜥蜴男に撃たれ、息を絶った。

頭の中で鳴り響く銃声に思考がかき乱される。

突然の出来事に言葉も出ないミアとジュエルは呆然と立ち尽くしていた。

血だまりの中に倒れている死体を、薄汚れた布ゴミを扱うかのように遺体を足蹴にすると、蜥蜴男は説明を始めた。

「驚かせて申し訳ありません。この旧地下街に勝手に住まう貧困難民が多くなってきているようなのです。こいつもその一人でしょう。全力で駆除を進めているのですが中々奴らも骨がある上にどんどん増えて行く一方で困っております」
蜥蜴は腕にはめた高級そうに輝く時計を見て続けた

「さて、そろそろ時間なので先を急ぎましょうか」

しばらく無言のまま歩くこと数分。

「大変お待たせしました。この先に我が国の王がお待ちでございます」
ミアとジュエル、そしてトカゲ男の三人は王様が居るという黒々しい重厚な鉄製の扉の前にようやくたどり着いたのだった。

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蜥蜴男が扉の隣にある薄い生体認識装置に手をかざすと、扉がゆっくりと開き始め、レディファーストと言わんばかりに二人が先に入るよう誘導された。

シューー

「うぁ!ナニコレ!?」

扉をくぐると、意外と中はまた狭い空間だな、と思ったのもつかの間。突然に煙状になったスチームが吹きかけられて目の前が白く覆われてしまった。
ミアは驚いた拍子に煙が気管に入ってしまったらしく咳き込み、ジュエルはお気に入りだったドレスが濡れてあからさまに不機嫌な顔だ。
「安心してください。減菌煙を吹きかけただけです」
後から入ってきたトカゲ男が説明を重ねる

さらに、その場でミアとジュエルは所持していた武器を外すことと、国から用意された衣装に着替えるように指示され、更衣室に案内された。

しかし、更衣室とは名ばかり。二人一緒に狭い個室で着替えているとミアがたまらずジュエルにたずねた。

「ねえ、なんだかこの国、怪しくない?」
「そうかしら?ここまで外部からの侵入者を防ぐのは当然だと思うわ」
ジュエルは既に乾いたお気に入りのドレスを脱ぎ、変な匂いが着いていないか確認してしかめ面になる。
サイアク。アルコールの匂いが染み付いてるじゃないの。

「さっきの乞食を殺したのが怪しい国だって想像するよりも、この国の敷地内にだけ雨が降っているのが気になるわ」
「そうかな?」

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ジュエルは身体の半分、左脚と左腕が機械でできている。いわゆるオートメイルという奴だ。
ミアがこうしてまじまじとジュエルの身体を観察するのは初めてだったのだが、いつも「美」に対してこだわっているのは知っていた。
ジュエルの裸は、植物の茎の様に細く直ぐに折れてしまいそうに見えるのだが、金にマット加工され鈍く輝く自作のオートメイルが黄金の薔薇を想像させる美しさだ。

「バカなの?」
思わず見惚れていたミアはジュエルの言葉で目が覚める。

「地上の砂漠のど真ん中からこの国に入ったけれど、国の中に入ったら豊潤な森が私たちが待たされた部屋の窓からみえていたわ」
「オマケにお菓子とお茶も無料!」
「私は食べなかったけれどね」
「ジュエルは全く手をつけなかったね、タダよりありがたいものはないよ?少しポケットに突っ込んで来たからあげようか?」
「結構よ。私は自分で仕留めた獲物以外は口に入れないことにしているの」
着替えの時に全身に塗る様に、と渡された甘い匂いのするクリームを「腕が錆びたりしないかしら?」と文句を言いながら身体に塗りながらジュエルは続けた。

「兎にも角にも、上が砂漠なのに地下がこんなにも豊潤な資源を持つ国。そして、あの撃たれた難民と呼ばれた男……。表のツラがいい人間ほど割ってみると真っ黒。って事が多かったわ。この国もそうなんじゃないかしら?」
「それでもお腹は空いたし、食料を買ってから荷物も返してもらわないと砂漠に戻ることなんて出来ないよ」

文句を言いながらも着替えを済ませた二人は着替え部屋を出て、さらに奥にある部屋の前に着いた。

そこにはすでにトカゲ男が待っており、二人がきちんと着替えを済ませていることを確認すると、先と同じような生体認識装置で扉のロックを解除した。

扉が開く間、ミアは全身に塗ったクリームの甘い匂いと空腹に耐えられずに、クリームまみれの腕を舐めてみる。

人工甘味料の味が強かったが、確かに甘く、脳がしびれるおいしさだった。




今月の一言

Writer:Hyuga.731

illustration:zinbei(HP)

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