月刊 Bedroom techno 4月号

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bedroomへの一枚/幽霊; – グレー [EP]
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ep4…Sept falling
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bedroomへの一枚

幽霊; – グレー [EP]

Music by 幽霊;
From the album “グレー [EP]”
http://goatfolk.bandcamp.com/album/ep

幽霊;
https://soundcloud.com/kanashiyurei

 

2014年頃に突如として増えだした「下手な日本語 を操る正体不明のトラックメイカー」達。

時には日本人による別名義であったり、時には本当に日本語を勉強中の海外在住アーティストであったりする。パッと思いつくだけで©OOL JAPANyung new sweatshirt etc……

 「幽霊;」彼もその一人だ。

 

彼はメキシコはザポパン在住のOmar Alejandro;ことgoatfolk;の別名義。名前の後の「;」が特徴らしい。
突如としてtwitterとsoundcloud上に登場し、爆発的にfollow数を増やしていった。
本名名義ではlive movieがメキシコのReady Set Sessionsというメディアのyoutubeにアップロードされていたり、とても活動的だ。
彼のbandcampを辿る限りでは、この「幽霊;」名義ではlo-fiだがパワフルでエレクトロニックなテクノサウンドの実験をしているようにとれる。
それは、本名名義のリリースでは、宅録独特のホワイトノイズが乗った生々しいレコーディング環境に対して、とても美しいピアノ・アンビエントを奏でているからだ。
ぜひこちらも聴いてみていただきたい

 

彼の別名義を含めたリリースを見ていると、音楽による実験というのが軸にあるのではないかと想像をしてしまう。
それは宅録環境独特のホワイトノイズから連想させるのかもしれないし、ミニマルティックな曲調だからかもしれない。もしくは彼から発せられる独特の正体不明感というか、不透明な雰囲気からなのだろうと私は彼の新曲を聴きながら思う。

 

この「都市の雨 」という曲はアンビエントでありながらもエモーショナルで、メキシカン風なDetroit houseを感じる一曲になっている
ミニマルでありながら決して無機質ではなく有機質なのは一発撮りという制作環境の制限からだろう。
それを聴いていて心地よいと思うか、それともcheepだと感じるかは好みの問題。

 


 


ep5…November Rain

「ようこそ!我が王国へ!」

扉を開けて現れたのは長机、シャンデリア、フカフカの椅子、煌びやかでシックな大部屋。そして大きなカエル。

201603nov2
倒れてきたら押しつぶされてしまうのではないかと思わせる巨体には、高級そうな深紅のマントが纏われ、頭の上には黄金に輝く冠が小さくちょこんと乗っているのだが、それらが二本足で立つカエルの姿には妙に似つかわしくない。

この国の王と紹介されたカエルの王様は、レストランで目の前にやってきた大好物を品定めするかのようにてらてらと巨大な目玉を輝かせて二人の到着を本当に嬉しそうに出迎えてくれた。

「さぁさぁ、長旅でお疲れでしょう。食事をしながら旅のお話しを私に聞かせてください」
そう言って王様はぱちぱちと手を二回叩いた。
すると、どこからともなくコックたちが幾数人ばかり空腹を刺激するかぐわしい香りを纏う料理を運び出てきたではないか。

ミアはとても空腹には耐えられないとばかりに早々と真っ白な長机の前に座り、料理たちが所狭しと机に並べられるのを生唾を飲み込み、落ち着かない様子でイタダキマスの合図を待った。

シャンデリアの明かりを瑞々しく反射し輝いている新鮮な香草と生野菜のサラダ、ブロッコリーと豆を使った暖かいスープ、温野菜の盛り合わせ・・・・・・。どうやら王様はそうとうな菜食主義らしい。一つも肉や魚を使った料理がなかった。

「さぁ、どうぞ温かいうちにお召し上がりくださいませ。うちの一流のコックが作る料理は幾多の旅人さんがお気に召してくださったものばかりです」

「いただきまーす!」

待ってましたとばかりに、空腹の限界だったミアは上品さの欠片もなく並べられた料理を片っ端から手を付け、口に運んで行く。

それを呆れながら眺めるジュエルも、ミアが食べ始めて安全なのを確認したのか、ようやく少しずつ料理に手を付け始めた。

二人の客人はしばらくして緊張も溶けたのか旅の話をしながら落ち着いて食を進めて行った。そんな二人の様子を目を細めニコニコしながら眺めているカエルの王様は料理にはまったく手を付けず、二人を優しそうに見ているだけだった。

201603nov1

…………

「あの国では大変だったよね」

「そうね、誰かさんのせいで有り金が全部なくなっちゃったんだから」

「……ごめん」

二人が旅の話をしながら料理を食べ終え、デザートのかぼちゃのプリンに手を付けていたとき、

「素敵なお話をありがとう。さて、今度は私のお話をしましょうか」

二人の話を微笑みながら聴いていた王様が話を切り出した。

「そうだな……。まずはこの国の話をしましょう」

カエルの王様はここで初めてフォークを手に取って、生野菜の盛り合わせの小振りなミニトマトに突き刺した。

「お分かりのとおり、この国は完全に地中深くに存在していて、水質、風、天気、気温、自然環境におけるすべてをコンピュータ制御して地上にいるときと同じような生態環境ですべての生物は生活できるようになっております」

 

テーブルを挟み向かいに座る大きなカエルは大きな口を開き長い舌でフォークの先にあるトマトを絡み取り、口に含んで転がし始めた。それはまるで飴玉でも舐めているかのように。

 

「地上が干からびた二十年前、周囲の好奇の目や呆れた表情、ひどいときには非国民だという非難に耐えながらも、希望を求めて仲間とともに穴を掘り進めてこの完成された国を作ったのです」
口の中で転がしていたトマトを「ペッ」と綺麗に磨かれた床に吐き出した。
トマトは力強く叩きつけられ潰れて赤い果肉や果汁と共にトロッとした透明に包まれた幾つもの小さな丸い種子が現れる。

 

「やがて、私がもはや一つの芸術作品ともいえる国に対して、非難してきたやつらはヘラヘラと笑いながら、さも当然という顔で入国と居住の申請を申し出てきましたよ!」

 

カエルの王様はフォークを持った手を振り下ろし、テーブルが揺れた事で食器が落ちた。

それと同時に、ミアがおびえた表情に変わり体を強張らせる。

ジュエルは一瞬の空白にピンと張り詰めた糸のような空気を感じていた。

「失礼しました。思わず熱がこもってしまいましたよ。あまりに憎たらしい表情を思い出してしまったものでね」
怒りから我に返った王様は話を続ける。
「しかしながら、私は考えた。この国が発展していくには労働力がいると。だから彼らにこう言ったんです『ここでは奴隷として暮らしてもらう。逃げたきゃ逃げればいい。上は砂漠だがね』とね。親切で頭のいい友人がいて彼らは幸せ者ですよ。なによりもこんな素敵な国はなかなかありません。服も住まいも食べ物も仕事も提供してあげているのですから」
「・・・・・・そうかもしれないですね」
引きつった笑顔のままにミアは返事をした

 


今月の一言

Writer:Hyuga.731

illustration:zinbei(HP)

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