月刊Bedroom techno11月号

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bedroomへの一枚
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ep6…lied april
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bedroomへの一枚

Mall Grab – Elegy

Music by Mall Grab
From the album “Elegy”
https://1080pcollection.bandcamp.com/album/elegy-12

Mall Grab
https://soundcloud.com/mallgrab

前回の月間 Bedroom techno 9-10月号でも紹介した注目高まる1080pレーベルの第三弾のリリース。

オーストラリアはニューキャッスルのJordon AlexanderのMall Grab名義による”Elegy”は、80年代末のシカゴのクラブでかかっているようなディープ・ハウスの4トラック。

2015年に自身のbandcampでリリースした作品集を含めてこれまでに様々なレーベルからいくつものレコードをリリースしてきて1年しか経っていないが、その再販売価格の高騰は彼がハウス界隈の中でも波に乗っているプロデューサーであることを示している。

その中でもこの”Elegy”は一番deepであるといえるだろう。
独特のイコライジングで仕上げたソウルフルなサンプリングをキックに乗せてドリーミングな仕上がりで決まっている。

最近の活動はオーストラリアを中心にDJイベントに積極的に参加している。
去年のイベントになってしまうが、私はこのANDROMEDA FES. で行われたTuff ShermとのBTBのvideoが特に好きだ。

ほかにもBoiler RoomやRinse FMにも参加しており、若干21歳ながら着実に地位を上げてきている。

2016年。いや、2017年も大注目のハウス・プロデューサーといってもいいだろう。

  



 ep6…lied april

「やがて、私が完成させた、もはや一つの芸術作品ともいえる国に対して、非難してきたやつらはヘラヘラと笑いながら、さも当然という顔で入国と居住の申請を申し出てきましたよ!」

カエルの王様が怒りに任せて手を振り下ろしたことによりテーブルが揺れて、ジュエルの元にあったフォークが長毛の絨毯の上に音もなく落ちてしまった。

まったく、この手の輩は静かに食事も出来ないのかしら。
そんな事を考えながらジュエルは足元のフォークを拾おうと手を伸ばした
しかし、その手が触れるよりも早くいつの間にか近づいていたウェイターが落ちてしまったフォークを拾い上げた。
そして、ウェイターは無言のまま手に持っていたペーパーに包まれた新しい銀食器をジュエルに差し出した。
ジュエルはそれを受取ろうとしたが、食事も既に終わり使わないことに気が付き
「ありがとう。でも、もう使わないから下げてくれる?」
お礼を伝え、食器を受け取らなかった。
そこで普通のウェイターの場合、「かしこまりました」と言って下がっていくのだが、このウェイターは何故か挙動不審になりながら震える声で答えた
「い、いえ、お受け取りくださいませ……」
急にウェイターはジュエルの手首を掴み無理やりにペーパーに包まれた新しい銀食器を握らせた。
そしてほんの一瞬、力強く何かを懇願するような眼差しでジュエルの眼をじっと見つめ、何かを伝えたそうに口を震わせたのだったが、やがて諦めたようにきびすを返して下がって行った。

ウェイターの突然の豹変に対して不思議と恐怖は湧かなかったが、恐らく何かを伝えたかったのだろうと察したジュエルは疑問と感嘆の色が混ざった複雑な表情で自分の手のひらに握られた重たく小さな銀食器のペーパーを外して、ようやく疑問の色が感嘆に塗り潰された。
それは、パンケーキを切り分けるには重たく大きすぎる、鋼でできた諸刃の短剣だったのだ。
さらに包まれていたペーパーに何か文字が書かれていることに気づく。それ読み終えるとため息を小さくして、覚悟を決めた表情で後ろを振り返り再びウェイター呼び戻した。
「ちょっと、ウェイターさん。カラシを持ってきてくれない? 特別にカラいのを、ね」

……

201611nov2

「ところで、我が国自慢の料理はお気に召しましたか?」
話も食事もひと段落して、落ち着いた頃。カエルの王様は先程とは打って変わって優しい表情で二人に訊ねた。
「ええ、とても美味しかったです」
「そうですか!満足していただけて良かった」
ミアは食事も終わったので、これから街に出て必要なものを買ってから明日の朝には旅を再開出来るだろうか、と考えていたのだが、それを提案する前に王様からのお国自慢がまた始まり、内心はウンザリとした。
「我が国の野菜は完璧な機械管理により効率的に生産されておりますので素材そのものが美味しいでしょう!
しかし一方で肉の生産数が追いつかなくてね……」
ジュエルはカラシなんかウェイターさんに貰っていたけれど、まだ食べるつもりなのかな?

「だからこうしてたまに迷い込んでくる『食材』を清掃、消毒、油塗りと野菜詰めまで行い、最終的に私が品質をチェックしてから精肉加工に入るのです。王国印のハムやソーセージは品質が高いと国民も大喜びですよ。何の肉を使っているかなんて考えもしないほどにね……!」

それならあたしももう一個だけ、この美味しいかぼちゃプリンを食べようかな。

「それでも、今年は肉の出荷が少なくて私が口にする分まで制限されてしまっていてね。もうずっと野菜ばかりの生活で耐えてきた……」

でもちょっとだけ今日は食べ過ぎちゃったから止めておこうっと。

「これでようやく私もまともな『食事』にありつけるというものだ……!」

「あなた、私たちを最初から食べるつもりだったのね」
「えっ?何を食べるって?」
ジュエルは相手にとって自分達が調理前の生肉としか見ていない事を判断した。
ミアは…寝ぼけているようだった。

「正解ですよ、機械のお嬢さん。でも、残念ながらもう遅い。牛から人間の肉まで、あらゆる肉を食してきたが、野菜がたっぷり詰まった新鮮なウサギの肉と人間の肉はさぞ美味いだろうなぁ」
恍惚の表情を浮かべるカエルの口からは粘度の高い涎汁が溢れ零れ、足元の絨毯に染み込んでゆく。

「あのドロドロにはシんでも触りたくないね」
「……うん」
二人の余りにも嫌悪感を露わにした表情はカエルの王様に対して癇に障ったのだろうか、紅いの体表を更に色深く染めて苛立ちをあらわし始めた。
「まだ自分たちの立場がわかっていないようだな! 先ずはその汚い口を持つ人間の小娘から食べてやる!」
そう言ってカエルは唾液撒き散らし怒りと食欲の矛先をジュエルへ向けてムチのような舌を鉄砲の様に発射した。
ジュエルは隠し持っていた短刀を既に逆手に構えて攻撃を待ち構えていたのだが、その刃先は空を切ることとなる。

ミアは動物的な眼力で、カエルの口からジュエルに向かって長い舌が伸びていくのを目で捉えていた。さらに、考えるよりも先に身体が動いてしまったのか、ジュエルを両手で押し倒す。
標的が変わった弾丸はミアを捉え、一瞬にして宙へ持ち上げる。
首と腹部をしっかりと巻き取られたミアは透明の体液まみれの顔を不快感と苦しさで歪める
「う、うぐ……」
「なにしてんのよ!バカ!」
ジュエルは押し倒されて少しの間こそ驚き困惑していたが、すぐに短剣を持ち直してミアを捉える触手の様な舌に切りかかったが遅かった。
「いただきます!」
ミアは一瞬にして巻き取られ大きなカエルの口の中に収まって行った。
カエルは大きな音のげっぷをするとミアが着ていた下着を吐き出す。
「うん…少しフルコースの順番が狂ったが、やっぱりメスの兎肉は生に限るなぁ!」
布はグチャグチャに濡れて淫靡な輝きを放ってそこに存在を表していた。
「さあ次こそはメガネのお嬢さんだ。今じゃ純粋な人間の肉も珍しい。さっさと食べてやりたいが、やっぱりその金属だらけの身体では少し調理が必要だな」

またもやカエルの口からピンク色の舌が伸びて今度はジュエルに襲いかかり体に巻きついた。
「く、苦しい」
しかし、カエルは突如として巻きつけていた舌を緩めた。
「あぐがぁ!」
驚いてのけ反った拍子に尻餅をつき叫び声を上げてのたうち回っている。それを横目にジュエル言った
「まったく……辛子と唾液まみれじゃない」
ジュエルは先程ウェイターに頼んでいた辛子を身体に塗りつけていたのだ。

「さぁ、今すぐミアを吐き出して荷物を返してくれるなら何もしないであげる。あと慰謝料として食料と水と熱いシャワーも頂戴ね」
ジュエルらつかつかとカエルに近寄って行ったかと思うと、ぐいと
義手の方で舌を挟みあげながら含み笑いを浮かべており、苦しむ姿を喜んでいる様だった。
「なにほ、いうは、ほうなはら、へっはいに、はええあう!」
カエルが闘志というよりも食い意地を燃やした眼で威勢を放った。
「あがっ!」
しかし、その次の瞬間には自身の舌が根元から切り離されており、口から多量の血液や体液を噴き出していた。
「んーと、何を言っているか分からないけれど、いいえ。という答えなのはわかったわ」
ジュエルは持っていた短刀で舌を切断。続けて、でっぷりと大きく丸い身体を首元から股下まで縦に裂いた。
201611nov1
「い”い”い” ⁈」
どろり、と赤黒の輝く臓物たちが我先にと裂け目から飛びだしていく中で、長い耳をぺったりと丸め、膝を抱えて丸くなりながら固く目を瞑っているスッポンポンのミアも濡れたまま内から出てきた。
「消化が遅くて良かった。これが本当の二兎追う者は一兎も獲ずってやつね。あら、あたしはウサギじゃなかったか」
カエルの王様は涙と汗と血で手や顔をを濡らしながら床に散らばった内蔵を裂け目へ必死に押し戻していたが、やがてその動作も遅くなり、最期には白目を向き、うつ伏せに倒れて動かなくなった。




今月の一言

Writer:Hyuga.731

illustration:zinbei     (HP)

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